イランとの核交渉に乗り出した。
アメリカのトランプ大統領は、7日に放送されたFOXビジネスネットワークのインタビューでイランに対して核開発をめぐる交渉を呼びかける書簡を送ったと明らかにした。
イランの核兵器の保有は認めない立場を示し「イランとは2つの道がある。1つは軍事的に対応する方法で、もう1つは取り引きをすることだ。私は取り引きをしたい」と発言。
トランプ大統領は2月、イランに対し制裁の強化を含む最大限の圧力をかける方針を表明する一方、イランの経済成長にもつながる協定を結びたいという考えを示し、対話を迫っている。
しかし、1期目のトランプ政権はイランが核開発を制限する見返りに欧米などが制裁を解除する「核合意」から離脱し、制裁を再開させるなど敵視する政策をとり、イラン側は不信感を抱えている。
【解説】
1. ペゼシュキアン大統領は「改革派」。アメリカとの手打ちと国際協調を志向
2. イランは中東で影響力を大幅に失い苦境
3. イランの国民感情が鍵
トランプ大統領はイランに対して「最大限の圧力」政策に戻る姿勢を見せる一方で、2月4日、「ぜひ素晴らしい取引をしたい。あなた方が生活を続けられるような取引だ」と発言し交渉を呼びかけている。この際もペゼシュキアン大統領は「戦争は望んでいない。だが、外圧には屈しない」と否定的な発言をしている。
ペゼシュキアン大統領は「改革派」で、アメリカとの交渉により「核合意の再建を目指す」としてきた。交渉そのものには賛成のはずだ。しかも、イランはシリアのアサド政権、レバノンのヒズボラ、パレスチナのハマスという自らの代理勢力が崩壊、あるいは勢力を大幅に失う厳しい事態となっている。ロシアもイランを支援する余裕はない。
アメリカから見れば条件が揃っている。しかしイランもそこで簡単に折れることはできない。アメリカ、イスラエルに対する国民の強い反感があるからだ。
トランプ政権は「ディール」という視点で物を見るが「国民感情」という要素を軽視する傾向がある。国際政治は損得だけでは動かない。イランの現状はトランプ氏の認識通りかもしれないが、トランプ氏の発言そのものが交渉を難しくする可能性がある。イランに対しては少し静かに交渉を続ける必要があるだろう。