アメリカのトランプ大統領は7日、自身のSNSにロシアに対する経済制裁の強化を検討していると投稿した。
投稿では、「停戦と平和に関する最終合意に達するまで、ロシアに対する大規模な金融制裁、制裁、関税を真剣に検討している。ロシアとウクライナは手遅れになる前に、今すぐ交渉のテーブルに着くべきだ」とコメント。
これまではロシアのプーチン大統領への称賛を繰り返す一方、ウクライナに対しては停戦交渉を行うよう強く迫ってきた。ロシアに対して圧力をかけるのは異例。
【解説】
1. トランプ氏の対応は停戦を最優先する点では一貫している
2. ロシアが攻撃を強めたことでトランプ氏は圧力をかけた
トランプ氏は「親プーチン」であり「ウクライナに不当に厳しい」という受け止めがあるが、それは間違っている。ウクライナ問題での一連の対応は「停戦を最優先する」という点から見れば矛盾していない。
戦況は概して言えば膠着状態でありロシアの支配地域をウクライナが全て取り戻すのはかなり難しくなってきている。それにはアメリカやヨーロッパ各国の軍事支援を大幅に増やす必要があるが、各国ともその意思は見られない。
ということは戦争が長引けば双方に市民を含めた死者が増えていき、アメリカをはじめとした各国の支援額も増え続けていくことになる。トランプ氏もその支持者たちも支援し続けることへの疑問が強い。そしてそれを終わらせることがトランプ氏の選挙公約でもあった。彼は選挙公約を守り、支持者に応えることを非常に重視している大統領である。
トランプ政権が中東とウクライナの戦争終結にこだわるもう一つの大きな理由は「対中国」に集中したいからだ。これについてはまた別の機会に詳しく解説したい。
ともかく、戦争終結を目指すトランプ政権から見ればウクライナは支援している相手であり、最終的に言うことを聞かせるのは可能だ。一方でロシアは違う。アメリカの言うことを聞くインセンティブがほとんどない。戦況もロシアにとっては追い風になっている。欧米の経済制裁もそれほど効いてはいない。もちろん兵士の多くの犠牲や戦費の増加などダメージはあるが、追い詰められているわけではない。だからトランプ氏はプーチン氏を褒めそやし、猫撫で声で交渉に引き出そうとしているのだ。
しかし、アメリカがウクライナ支援を一時的に停止した後、ロシアはウクライナへの攻撃を強めている。この辺り、プーチン大統領は老獪だ。アメリカに対して一切甘い顔を見せない。そこでトランプ氏はプーチン氏に対して「こちらもずっと下手に出ているわけではないぞ」というメッセージを送ったのが今回の「制裁検討」である。
ただし、あくまでもロシアを交渉に引き出すのが目的だから、当面、本当に制裁を強化するつもりはないだろう。こんなジャブもかましながらなんとかロシアを誘い出したい。プーチン氏はそんなアメリカの思惑も十分承知しながらより有利な条件での停戦を目指す。しばらくは両者の腹のさぐり合いが続くことになるだろう。
