3月11日 3つの国際ニュース 【解説】

1.ウクライナとアメリカが11日にサウジアラビアで高官協議。AFP通信は「ウクライナが部分停戦を提案へ」と報道。
 「ドローンやミサイルなどでの空爆の中止」と「海上での戦闘停止」を提案。武器支援の停止というトランプ大統領の圧力を受けてウクライナが一歩踏み出した。
 一方でトランプ氏はロシアへも大規模な追加制裁や関税を検討しているとSNSで警告。「手遅れになる前に今すぐ交渉のテーブルに着くべきだ」と脅している。「とにかく戦争を終わらせる」という強い意志の元、双方に強い圧力をかけている。

【解説】「トランプはプーチン寄りだ」という批判が続いていた。これはあまりにも表面しか見ていない批判だ。戦況はロシアに有利、そしてアメリカは早く戦争を終わらせて巨額の支援をやめたい、というのが現状だ。それを考えればロシアに対して配慮しながら停戦交渉に参加させようとするのは当然の戦略であろう。
 「ロシアに有利な停戦・終戦となればロシアが調子に乗ってさらにヨーロッパを侵略する」という指摘があるが、その懸念はどんな停戦を結ぼうが消えはしない。ロシアのさらなる侵略を防ぐには、抑止力を高めるしかないのだ。

 これまでの世界は国際法に支えられた「正義」による秩序があるように見えた。しかし今は「力による秩序」を目指さざるを得ない状況にある。各国が自国の利益優先をむき出しにした世界がすでに広がっている。トランプ氏はその現実を踏まえた対応をしているとも言える。

2.カナダ マーク・カーニー氏が次期首相に
 支持率が下落を続けた結果、ジャスティン・トルドー首相が辞意を表明。与党・自由党が行った党首選で元カナダ銀行総裁のマーク・カーニー氏が勝利した。近くトルドー氏が正式に辞任し、カーニー氏が首相に就任する。
 カーニー氏はトランプ大統領への激しい批判を繰り返している。経済界の経験のみで政治経験はない。カナダではトランプ氏のカナダへの追加関税や「51番目の州になるべき」という発言などで反発が強まっている。

【解説】野党・保守党にリードを許す中ではこのトランプ批判は国内政治的には正解かもしれない。しかし仮に選挙に勝った場合、アメリカとの関係を改善できるのか、という難しい状況に自らを追い込むことになる。

 トランプ氏はカナダの国境管理の甘さを繰り返し批判しているし、カナダの国防費の低さへの不満もたまっている。カナダの国防費は2014年にNATOで決めた「GDPの2%」という目標に遠く及ばず、1.4%にすぎない。アメリカに守ってもらえると考え十分な防衛力を整備していない「安保タダ乗りだ」という不満がアメリカには存在する。

 カナダはトルドー時代の9年間に国家予算を40%も拡大させてきたが国防費はまだ低いままだ。一方のカナダ国民は今のところ、トランプ氏に対抗できる「強いリーダー」を求めているという。
 しかし、アメリカに安保を依存し、アメリカへの大量の輸出が経済を支えている構図も考えれば、単なる感情に基づく反発では問題は解決しないだろう。アメリカから見れば「甘えている」ようにしか見えない状況を変える姿勢を行動で示さなければならないだろう。ただし、今のところカナダ国民がそれに気づいているかどうかは疑問である。

3.イラン最高指導者がアメリカとの核交渉を拒否する姿勢
 トランプ氏は7日の米FOXビジネスのインタビューで、イランが核開発について協議に応じなければ軍事行動に出る可能性があると、書簡で警告したと述べた。インタビューでは「イランには、軍事的か、それとも取引をするかの、二つの対処法がある」と述べた。
 これに対して8日、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が政府高官らとの会議で反発し、交渉を拒否する姿勢を示した。「向こうは期待を示しているが、イラン側がそれに応じるなどあり得ない」「いじめをする政府とは交渉しない」と述べたという。

【解説】改革派とされるペゼシュキアン大統領大統領も2月に同様の発言をしている。トランプ政権が経済制裁を強化したうえで交渉を呼びかけていることを批判していた。今回のハメネイ師の発言も同じロジックだ。トランプ氏はほとんどの場合、圧力をかけて「嫌なら譲歩しろ」という同じ手法を取っている。これは西側諸国には通じてもイランに通じるだろうか。

 一方、イランも状況は苦しい。シリアではアサド政権が崩壊し、ハマスも大きな打撃を受け、レバノンのヒズボラも大きく戦力を失っている。ロシアにもイランを助けている余裕はない。トランプ氏は弱ったイランは譲歩するしかない、と考えているのだろう。しかしイランは国民感情も重要なファクターだ。その意味では譲歩は容易ではない。逆にペゼシュキアンを追い詰めて譲歩しにくい状況に追いやる可能性もある。改革派の大統領という貴重な機会を活かせるか。中東の今後に大きな影響を与えることになる。

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